会社を辞める決意をする前に読んだ本です。
Amazonで手当たり次第、仕事に関する本を探した時に偶然見つけました。
彼氏、彼女として付き合ってる2人の日常について書かれた本。ただし二人は既に40代後半で、彼氏は定職にはついていない。「金は生きていく上で最低限あればいい」という価値観を持つ彼氏「ヨシオ」を彼女「マキエ」から見た視点で描かれた本です。
へー、こういう価値観で生きている人もいるんだなぁ。と感じた本。このころは、この手の「金銭や名声に振り回されずに生きていく」人たちの本をたくさん読んだ時期でした。その中でもなかなかインパクトの強い本。ちょっと真似はできないですが、所々の考え方は見習いたいと思いました。
本書の中では「自分をまっとうする」という言葉が出てきます。この言葉が好きです。これについて以下のように述べられています。
P.148
”自分をまっとうする”は、ヨシオがよく使う言葉だ。私は、改めてヨシオに尋ねた。
「ねえ、自分をまっとうするって、ヨシオはよく使うけど、いまひとつわからないんだよな。誰だって、自分をまっとうしたいって、思ってるんじゃないの?」
「いや、オレに言わせれば、自分らしく生きて自分をまっとうしたいという意識が、みんな低すぎる気がしてならない」
「まわりの価値観に流されてるってこと?」
「それもある。実際、まわりにどう思われるかで自分の生き方を決めている人は多いだろうし。ただし、どう生きるかは人それぞれだから、人によっては『しっかり金を儲けて、家族を幸せにする』っていうのが、本当に自分らしいって人もいると思う」
「金儲け、イコール悪じゃないのね?」
「そりゃそうだよ。[本書に登場する友人]なんて、いい例だな。『しっかり社会的に成功して金を儲けて、家族を幸せにする』っていうのが、まさに彼らしい生き方なんだ。そしてあいつは、それに向かってあれだけしっかり前に進んでいるから、とても立派だと思う。金を稼いでるからじゃなくて、自分をまっとうしているから、という意味でね。」
私は、わかったような、わからないような気がした。ヨシオが続けた。
「なんというか、みんな、よくできた舞台上で、必死に踊らされているような、そんな気がするんだよ。そこではなんでも金に換算して価値が決められているから、必死に働けとか、効率を上げろとか、成功に向かって成長しろとか、勝負に勝てとか、野心を持てとか、そんなことばっかり言ってる」
「みんなが踊らされている舞台っていうのは、資本主義経済ってこと?」
「まあね。でも、そんな単純なもんじゃない。それも舞台装置のひとつなのかな。だから、俺はできるだけ踊らされずに、生物としての自分をまっとうしたいのさ。そのための道しるべは、本来、自分の中にしかない。なのにみんな、まわりばっかり見てるから、そもそも自分がどうしたかったのかわからなくなるのさ」
ここに全てが集約されていました。この本もまた、他の本と同じく、ぼくの価値観を変えてくれる良い本でした。ぼくも、よくできた舞台装置で苦しみながら踊ってきました。まわりの目など気にせず、自分をまっとうする生き方を見つけて、それに従って人生を歩んでいきたいと思いました。
2015年、会社辞める決意を固めるために読んだ本にもピックアップしました